Todd Rundgren トッド・ラングレン / Something / Anything?
トッド・ラングレンについては、いろいろな切り口を持って語れる。
ディラノロジストと呼ばれる人たちがディランの歌詞を徹底的に研究するように、トッド・ラングレンを詳しく突き詰める人たちもいる。ことの是非ともかくとして、それほどの魅力を持っているということなのだろう。
ここではラングレノロジスト(?)的なことには触れない。
忘れがたい「I Saw The Light」体験をメモしておきたい。
ボクは忘れ物大王である。とにかくよく忘れ物をする。
アメリカで買付中のときのこと。レコード店に入るときには、カバンをレジに預けるのがほとんどなのだが、そのカバンを受取忘れてホテルに戻ってしまったことがある。
あわてて一人でレコード店に向かった。
その道すがらのこと、大きな橋を渡った。
ボクは橋嫌いである。高所恐怖症なのだ。
財布やらなにやらが入っているカバンを忘れていて不安な上に、しかも橋の上である。不安が合唱し始める。
すると少しずつ目前が広がって、見事な夕陽が目に入った。
その瞬間にFMラジオから「I Saw The Light」が流れ始めた。
ものすごくホッとしたのだった。
壮大な風景のど真ん中、ラジオをフル・ボリュームにして、一緒に口ずさんだ。
見事な景色、見事な音楽だった。
で、カバンはというと、無事に手元に戻ってきた。よかった。
「I Saw The Light」を聞くと、忘れものはもう金輪際してはいけないと自戒しつつ、胸の奥がプチッと痛む。
「I Saw The Light」は、「 Something / Anything?」に収録されている。(大江田信)