Richard Barbary リチャード・バーバリー / Soul Machine
ジョニー・リヴァースのヒット曲である
「僕等の街(The Poor Side Of Town)」。
1966年にヒットし、
とくにリヴァイヴァルをしたこともない曲だが、
ごくたまにラジオから流れてくることがあった。
ぼくにとってはずっと、
昔からひっかかっているんだけど、
どこの誰が歌う何という曲なのか
わからずじまい。
無名のまま、
心のスタンダード、
“裏”スタンダードになっていた曲だ。
あるとき、
その曲に突然再会した。
それはオリジナルを歌うジョニー・リヴァースではなく、
CTIにアルバムを残したこのリチャード・バーバリー。
「ソウル・マシーン」というタイトルとは裏腹に
ファンキー度控えめな内容が最初は不満だったのだが、
シルキーで絶妙にブラック&ホワイトなポップスに
聴きこむうちに引き込まれた。
たぶん、こういうアルバムは、
一度ではわからない。
雨の日や、風邪を惹いて外に出られない日の
どこかやるせなく持て余した気分が
サウンドを解く鍵になったりするタイプの一枚だ。
その中に「僕等の街」の
最高のカヴァーが入っている。
思わず作曲クレジットを見ると、
ジョニー・リヴァースとルー・アドラーの共作とある。
そうだったのか!
あれはきっとジョニー・リヴァースだったんだ。
そのとき初めて、
ぼくは自分の中の幻の名曲と対面した。
雨の日気分の心が、そこからすっきりと晴れていって、
今はこの曲も
このアルバムも堂々と“表”のスタンダードになっている。(松永良平)