Paul Vance ポール・ヴァンス / Ma Vie _ My Life

Hi-Fi-Record2007-05-31

 ずっと長い間にわたって、フォークが好きだった。だからなのか、僕のレコード棚やCD棚には「頑張ろう」的な歌が多いのかも知れないぞと思い始めたのは、ハワイアンを熱心に聞くようになってからだ。


 ハワイアンには「頑張ろう」ソングは少ない。とはいえ、基本的には自分たちの生活に肯定的な讃辞を述べている内容が多い。もちろんゆる〜く、自然〜に、そういう気持ちを歌っているのだが。気持ちがポジティヴなのだ。



 と、こうして自分でも理由を考えてみたりしているのも、最近になって厭世的な気分だったり、軽い喪失感だったり、そういう音楽にどうしても惹かれてしまうからだ。
 代表はロッド・マッケン。
 その先輩世代に当たる人が、このポール・ヴァンスである。



 「ビキニ姿のお嬢さん」なんて曲をブライアン・ハイランドに書いて、大ヒットを飛ばしていた60年代初頭。50年代末にはペリー・コモのヒット曲「キャッチ・ア・フォーリング・スター」なんて大ヒットも書いている。
 この2曲で判断するのも早計だが、どちらも楽天的な気分が漂う作風。要するに、イイ感じにお気楽である。



 そのポール・ヴァンスに、こんなにスタイリッシュなソロ・アルバムがあった。
 ジャズやシャンソンをサラッと自分風に翻案している。
 全篇に漂う軽い喪失感、厭世観がたまらない。なにしろ無理して力まないのである。



 メジャーセヴンスからシックスへと、メロディとコード感が浮遊する「Sexy」。アルバムのAラスには、こんな曲がそっと収められている。夜の3時過ぎくらいを一人で過ごす気分か。
 美味そうにタバコをくゆらすジャケ。
 長年の禁煙を破ってしまいそうになる音楽。(大江田信)


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