Hugo Loewenstern / Who Said Good Music Is Dead?

Hi-Fi-Record2007-06-11

「良い音楽は死んだなんて誰が言った?」


楽家ならば、
一度はこういうセリフを吐きながら
自分の作品をプレゼンしてみたいものだろう。


そして、
自分の作品について
誰かにこういうことを言ってもらえるのなら
なおさら幸福だろう。


このアルバムの主人公であるサックス奏者
ヒューゴ・ローウェンスターンは、
その幸運に浴した人物。


彼に対してそう言ったのは
アレンジャーのジョニー・リチャーズ。
スキンヘッドの怪異な容貌ながら
スタン・ケントン楽団で知的な編曲の下積みをしてきた
その実力とセンスには定評がある。


彼は声を大にして言う。
ヒューゴはハリー・ジェームスやトミー・ドーシー楽団で
目立たないが素晴らしいプレイをしてきた。
彼の音楽は、もっと聴かれるべきだと。


ヒューゴにとって生涯最高の、
そして結果的に唯一となった晴れ舞台のために
彼は一肌脱いだ。
一肌脱いだどころか、
このアルバムで彼が施したストリングスのアレンジは
ジョニー・リチャーズにとっても生涯最高のものになっている。


自分のためでもなければ、
作品のためでもない。
ただ、この寡黙な職人に最高のプレイをさせるためだけに
彼が書いたスコアは、
まるでラブレターのように
切なくて儚くて優しい。


まいったな。
まるで良くできた映画みたいなレコードだ。(松永良平


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