Rickie Lee Jones リッキー・リー・ジョーンズ / Girl At Her Volcan
リッキー・リー・ジョーンズがグラミーの新人賞を獲得した1979年、同じく新人アーチストとしてプロモーションが始まっていたカーラ・ボノフと、どちらが後に大きく育っていくアーチストになるか、仕事場で議論になったことがあった。
優秀で敏腕なプロデューサーとして地歩をかためつつあった先輩のM氏は、そりゃ、リッキー・リー・ジョーンズに間違いないと、すぐに断じた。
カーラ・ボノフを好きだった僕は、いや、カーラだと抗弁したけれども、取り上げられなかった。
その後の二人の歩みを見れば、リッキー・リー・ジョーンズの方が、アーチストとしてその独自の音楽性を発表し続け、また大きく支持を得ていることがわかる。
カーラ・ボノフは、ソロとしてのほか、1995年に再結成したブリンデルでも来日してるけれども、やはり70年代後半から80年代にかけて、優れた作品をリンダ・ロンシュタットらに提供したシンガー・ソングライターの一人という認識が一般的なのだろう。
その場の話の流れから、つい、カーラ・ボノフの肩を持ってしまっただけで、別にリッキー・リー・ジョーンズがキライだっわけではない。
リッキーが子供の頃に聴き知った作品をとりあげたアルバム「Pop Pop」がとても好きで、この「Girl At Her Volcano」をその前哨戦の作品と受け取って聞き続けてきた。
奇矯という言葉がある。突飛と言う意味だ。リッキー・リー・ジョーンズを聴いていると、この言葉を思い出す。ボクの手に負えない人なのだろうなあと思う。負えるわけが無いだろうとも思う。
それにしてもこのオネストなボーカルを聴いていると、なんだか愛おしくてたまらない気持ちになる。
彼女によって歌われる「愛しのレネ」や「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」、「アンダー・ザ・ボードウォーク」など、オリジナルを彷彿させつつも全く新しい命を吹き込まれている。
かつての恋仲だったトム・ウェイツが書いた「レインボー・スリーヴス」の歌唱もすごい。凄絶。そして切ない。(大江田信)