Mayo Muir メイヨー・ミューア / The Magic Of Mayo Muir
彼女はメイヨー・ミューア(Mayo Muir)の名前でデビューした。ハイウェイメンのメンバーとつながりを持ったことがデビューのきっかけとなったと裏ジャケットに記してある。
フォークのレコードにカンを持つ方ならわかるだろうが、デビュー・アルバム「The Magic Of Mayo Muir」には、必ずしも彼女の自発性な気持ちに沿って吹き込まれたのではないだろうと思わせる曲も収録される。
そう想像させるのは、20年ぶりのソロ・ソロアルバムの内容の自由な振る舞いのゆえだ。ここにはファースト・アルバムとつながっている音源もあれば、ついえている音楽性もある。
そこには20年間のという長い時間が流れている。
ここから彼女は、アン・メイヨー・ミューア(Ann Mayo Muir)を名乗った。
ファースト・アルバムに収録された「Patchwork Of Dream」は、セカンド・アルバム以降からも得られる音楽性だ。素朴で、誠実で、聞き手の胸を痛ませるほどに無防備に歌われる。
ただし20年後の彼女は、すっかり大人の女性の立ち振る舞いを得ていて、これほどに赤裸々に音楽を示していない。
であればこそ、なおさらファースト・アルバムの輝きがいとおしい。
ハイウェイメンと言えば、60年代初頭にナンバー・ワン・ヒットを放ったトップ・フォーク・グループだ。その助力があってこそのデビューである。思わぬプレッシャーもあったに違いない。
手探りをしながら、彼女は自分の音楽を表現したのだろう。
セカンドから見えてくる大人の女性の姿が、20年前のファースト・アルバムに封じ込められた若き彼女の姿をいまいちど照射する。
なんらかの事情があって、アルバム発表に20年の時間を経てしまった人のふたつのアルバム。並べて聞いてみるというのは、聞き手だから許される贅沢でもある。(大江田信)