The Rooftop Singers ルーフトップ・シンガーズ / Rainey River

Hi-Fi-Record2007-08-16

 映像投稿サイトのおかげで、思いもかけない映像を見ることができるようになった。
 ルーフトップ・シンガーズのライヴ映像もそのひとつ。これまでは映画「フォレスト・ガンプ」のサウンド・トラックに彼らの代表的ヒット「ウォーク・ライト・イン」が使われたことから、背景資料的なCDRの映像集(具体的な作品名を忘れた)にライヴ映像一曲分が、収録発表されているのみ。といってもYoutubeに1曲あがっているだけなので、これでもまだ2曲分しか見られないけれども。



 Youtubeに上がっている「I've Working On The Railroad」を見る。
 3人の男女トリオがマイク一本でハーモニーを響かせる。
 これが楽しい。
 一本のマイクを巧みに使いながら、コーラスとソロとを交える。ソロ・ボーカルはマイクの正面に出る。コーラスになると、すっと体を引く。マイクが主従をきわだたせる。
 お笑いの3人組コント・チームが一本のマイクを使いながら芸を披露するのに似てなくもない。
 マイクが4人目のメンバーのようだ。
 

 つとめてマイクの存在を際立たせないライヴが主流となって久しい。ステージで演奏するアーチストのためのPA装置も小型化し、またはイヤホン・タイプになってからは、聴衆には意識されない存在になった。
 そういう時代には、そういうライヴの方法がある。


 60年代のライヴ映像を見ると、ステージの真ん中にドンとマイクが立っていることがほとんどだ。
 こうして1本のマイクで3人がハモる映像を見ていると、マイクの存在が音楽の構造の一端を解き明かすことになり、それがレコードを聴くと時はまた別の楽しみをもたらしてくれる。



 コーラスの巧さ、粘り強い黒っぽさ、切れ味の良さなど、最良の味わいのグループ。ちょっと素っ気ないくらいの突き放した演奏の裏に、熟練の技術が隠されている。(大江田信)
 

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