Boston Pops ボストン・ポップス / Fiedler In Rags

Hi-Fi-Record2007-08-23

 ハイファイ・レコードのサイトで紹介にあるように、長年のRCA在籍の後、ポリドールに移籍してからのボストン・ポップスの音源は、このところやっとCD化が行われるようになったとは言え、まだまだオムニバス的にしかまとめられていない。
 その数少ないCD収録音源のうち、本アルバムからは3曲がピックアップされている。



 いま手元にCDが無いので、記憶をたどりながらメモするのだが、たしか「シュガー・ケイン・ラグ」と「12番街のラグ」と「タイガー・ラグ」の3曲だったはず。この3つ楽しみながら、繰り返し聴いていた。(夜半に帰宅して確かめてみたらこのほかに「イージー・ウィナーズ」と「ダークタウン・ストラッターズ・ボール」の計5曲が正解だった。スミマセン)。
 そうだったのか、このアルバムにこういう曲順で収められていたのかと、ちょっとした感慨を持ってレコードを手した。


 20世紀初頭のキャバレーを模したアルバム・カバーに納まるタキシード姿のフィードラー。確かにこういう場所でラグタイムは演奏されていたのだろう。ジャケットに写るように人間のピアニストが演奏すると同時に、レコードが登場する以前、ロール・ピアノ用に用意された作品でもあった。シンプルな構造ながら、自動ピアノという機械が演奏するメロディでもあったのだ。
 そのせいなのか、ピアノという楽器の特性なのか、ラグタイムは不思議に幾何学的な楽しみに満ちている気がする。コードの展開を初めて見出した少年の喜びのようなものが、つまっている音楽だという気がしてしまう。


 ピアノ曲ラグタイムオーケストレーションされても面白いのだろうか、というご心配には至らない。
 カラフルな音色の楽しみや、ダイナミックなリズムの動きのスリルが加わって、とても楽しい仕上がりになっている。特にチューバやトロンボーンなど、低音部を支えるブラスの音色の動きが面白い。見た目には鈍重なように映るこれらの楽器が、愛くるしい響きを加えている。ボストン・ポップスらしい、明るい気分が横溢する演奏だ。
 楽器の練習用メソードのようなメロディが、くるくると展開しながら思いがけない楽しさを生み出していく。それがとてもよくわかるオーケストレーションだと思う。(大江田信)


Hi-Fi Record Store