Ian And Sylvia イアン&シルヴィア / Northan Journey
カナダ出身のデュオ。
ジョニ・ミッチェルやニール・ヤングやトニー・コジネクやブルース・コバーンが話題になる10年くらいも前のこと、同期のカナダ出身シンガー・ソングライターと言えばゴードン・ライトフットくらいだったころ、アメリカに北の国の風を運んできたシンガー・ソングライターの夫妻だ。
このとき夫君のイアン・タイソンは30歳を過ぎていて、奥様のシルヴィア・タイソンは20歳をまわって少しくらい。仲睦まじさをジャケットに写し込んでいる。
レコードから聞こえてくる音の方はというと、どことなくヒップな感じがあって、それも64年、65年と年代を下るごとにより鮮やかに聞こえてくるようになる。フォークからフォークロックへの音の移り変わり読み取ろうとする時に、彼らのレコードはとてもいいサンプルになるのではないかと思う。
本作は、フォーク・ロックに転じていく、そのちょっと前の作品。
二人の作家としての力量がさりげなく刻印された作品だ。
A面のトップに収録されたのは、シルヴィア作の「ユー・アー・オン・マイ・マインド」。のちにWe Fiveによってカバーされ、スマッシュ・ヒットを記録した。イアンとシルヴィア自身も、フォーク・ロッキンなサウンドで移籍先のレーベルで再レコーディングしている。
B面トップには、イアン・タイソンの「サムデイ・スーン」。ジュディ・コリンズがカバーして、こちらもささやかにヒットを記録した。伸びやかなメロディが気持ちのいい、カントリー風味のミディアム・バラードだ。
この時点では、サウンドそのものには、まだまだフォークの香りが強い。しかしそこには、多くのフォーク・シンガーたちの作品からは香ってこない、ヒップな匂いがそれとなく香ってくる。
この時点でのマネージメントは、アルバート・グロスマンだったはずだ。
ボブ・ディラン、ゴードン・ライトフット、ピーター、ポール&マリーなど、グロスマンが束ねていたアーチスト達に共通する、グリニッジ・ヴィレッジで起きていた動きを敏感にドキュメントするサウンドが響いている、そんな気がする。(大江田信)