The Belmonts ザ・ベルモンツ / Cigars, A Capella, Candy
もう十年以上前にこのアルバムが日本で初めてCD化されたとき
付いた邦題は「ストリート・コーナー・シンフォニー」ではなかったか。
ドゥワップ・ナンバーの有名なイントロを
ひたすらアカペラでメドレーした傑作ナンバー
「ストリート・コーナー・シンフォニー」は
本作のラスト・ナンバーでもある。
山下達郎さんの多重録音アカペラ・アルバム連作
「オン・ザ・ストリート・コーナー」のタイトルと酷似なわけだが、
もとはといえば、
このアルバムこそ、その元ネタ。
原題の「シガーズ、アカペラ、キャンディ」も
非常に意味と趣の深いものだ。
マンハッタンの下町や、
ブルックリンやブロンクスで見かけるコーナーショップ。
「アカペラ」の場所に入るのは
看板の形から察するに「コーク」かもしれないが、
こうしたコーナーショップで購入するもので
意外とポピュラーなのはロト。
つまり宝くじ。
「アカペラ」の場所に「ロト」が入ると想像すると
彼らが歌一本で勝ち得た成功の夢物語にまつわる
努力と幸運のバランスを象徴しているようで面白い。
もうひとつ。
「アカペラ」の語源はイタリア語で
無伴奏の歌唱というものらしい。
イタリアからアメリカに渡ってきた移民たちのもたらした
もっとも豊かな音楽文化のひとつであり、
その根源は昨日亡くなったパヴァロッティの
豪勢な歌声ともつながっているのだなとしみじみ思った。(松永良平)