Spatz スパッツ / I Wish I Felt This Way All The Time
アコースティック・スイングの消長をつぶさに見てきたつもり。
消長といま書いたばかりだけれども、実はハイファイ・レコードはアコースティック・スイングへの情熱を失っていないつもり、でもある。
フリーソウルやソフトロックと同様に、アコースティック・スイングもジャンル縦断、横断的な感性がはらまれている言葉だ。
そうした感性が働いていると予感させることが、新しいジャンル用語が出来上がっていく過程で最も肝心なことだと思う。
まだまだ歩いてみたいジャンルがいっぱいある。
新たなきざしを見いだしたときには、新しい言葉を考えなければ。
ビック・バンドのコーラス隊がリハーサルしている、そのままをさらっと録音したようなスパッツのレコード。
ギター一本のバックアップで、男性2人と女性が3声のコーラスをハモっている。ギターが生み出すグルーヴが3人に伝わりながら、一つにまとまっている、その感じが楽しい。ギター・スイング・コーラス。このレコードのポイントだ。ピアノの躍動とはまた違う、微妙に揺れる感じ。よりシンプルなバッキングのもう一つの「リオ・ニド」。
彼ら自身がどのジャンルに所属している意識で音楽をやっていたのか、よくわからない。それはローカルのレコードにひんぱんに見られることだが。レコード・ショップのどの棚に収まっていたのかもよく覚えていないし。
たぶんアコースティック・スイングという言葉を胸に探すことが、こうしたレコードを見つけ出すときの援護射撃になっているような気がする。(大江田信)