Craig Nuttycombe クレイグ・ナッティカム / It’s Just A Lifetime

Hi-Fi-Record2007-09-19

 猫ジャケに駄盤無しというファンがいる一方で、犬ジャケに駄盤無しという声も有る。そういう犬ジャケ・ファンが、代表的なレコードして挙げるのがこれ。
 おだやかな雰囲気で抱かれている犬の表情が、ご主人クレイグとの関係を物語っているようで、犬好きはほっとした気持ちになる。


 ほっとした気持ちになるという表現は、このレコードを聞きながら感じる感想としても最も適当と思う。フォーキーでポップなメロディ・センス。ウォームなサウンド。気取りのない素朴なボーカル。豪速球ではない。ゆるやかなストレートの直球が、ストンと聞き手の心のミットに納まって来る。


 ここまでにアルバムを発表するなど音楽活動を続けており、繰り返しチャレンジするもなかなかヒットが生まれず、希望と失意を繰り返したと伝えられる。このアルバムも、発表当時、ヒットにまでは至らなかった。


 クレイグは大都市のロスアンジェルスから北カリフォルニアの小さな町に移り住む。そして大工のような仕事をしたと述懐している。10年余の暮らしを経て1990年にアルバムをカセットでリリースした。
 そこでは「 It's Just A Lifetime」と、変わらぬ彼の音楽が響いている。彼の心の再生に、音楽はよき友だったに違いない。音楽を創造し発表することが、彼に自分を取り戻させる原動力でもあった。クレイグの音楽は、彼自身とそういう深いつながりのもとにあるということが、このアルバムの響きからも十分に察せられることだろう。(大江田信)


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