GUIRO / Album
やっぱりGUIROのことを書こうと思う。
一昨年になるのか、
ノラ・ジョーンズが歌った「Don't Know Why」の作者ということで
一躍脚光を浴びたジェシ・ハリスの初来日公演を観た。
そのときに、
彼はMCでこんなことを言った。
「日本のCDショップにはブラジル音楽のCDがいっぱいあって大変だ」
その言葉は、
彼のつくる音楽のバックボーンにあるいろんな香りのひとつが
ボサノヴァであることの披露であり、
と同時に、
それを消化して彼だけの楽曲とサウンドにしてしまっていることの
ちょっとした誇りでもある。
そういう要素をちょいと持ってきてみましたというような
肌から浮き上がるお化粧ではなくて、
手や足を動かしてみたら自然とそのリズムになっていたという
好きの高じ方だと感じた。
自分が好きな音楽を聴いて生きてきた証としての滲み方とでも言うか。
日本にもそんな匂いのシンガーソングライターが
出てきたらいいなと思っていた。
GUIROの高倉一修は、
ぼくにそんなことを感じさせてくれる貴重な存在だ。
複雑な要素が絡み合っているようなサウンドも、
そのひとそのものを観て感じているのだと思えば、
すっと理解できる。
複雑でない人間などいないし、
「何とかっぽい」と乱暴に割り切れるほど
音楽は簡単じゃないのだと
GUIROの「Album」を手にして大声で言いたい。(松永良平)