Don McLean ドン・マクリーン / Homeless Brother

Hi-Fi-Record2007-10-10

 今は、もう秋、なので、こんな夕暮れに聴きたくアルバムを一つ。
 久しぶりの友達からかかってきたみたいな電話口の声のように聞こえるボーカル。人恋しさを思いっきりかき立てる響き。街に出て友達を捜したくなる。宵の口だし、そろそろウールのカーディガンでも着て。


 彼のアルバムにはいつも、それとなく自身が育った音楽がカバーされている。ここでは「涙のチャペル」を取り上げている。それもアカペラのゴスペル・コーラスを後ろに従えてのもので、音楽の向こうで彼が「ヤッタね!」と言いながら微笑んでいる様子がうかがえるようだ。楽しそうだな。基本はギターの弾き語りの人なのだ。



 「アンド・アイ・ラヴ・ユー・ソー」、「ヴィンセント」など、彼の書くバラードは、とても素晴らしい。それも彼自身の声で聴くのがいいのだが、このアルバムには、そうした著名曲は無い。それでもなんとなく、心に残る。大上段に振りかざすところが全くなくて、さりげないこと、それがこのアルバムの身上。
 針を上げた後に、ふと誰かに電話したくなってしまうアルバムでもある。(大江田信)


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