Kenny Rankin ケニー・ランキン / Kenny Rankin Album
外は雨。台風20号がやって来ているせいで、土曜日の夜の7時だというのに、ハイファイの前の明治通りには人影すらない。いつもの土曜日とは、比べものにならない。降りしきる雨と、ときおり吹き抜ける強い風。
なんとなく寂しい夕暮れには、なんとなく寂しい雰囲気の曲を聴くに限る。
こんなにポツンとした気分の時には、それがいい。
それって逆療法?
そうかもしれない。
で、手に取ったのがこれ。
なんだかやたらと切ない気分になるレコードなのだ。
なにしろ冒頭の「House Of Gold」に、ぐっと胸が締め付けられてしまう。かつて作者がハンク・ウィリアムスと知って、とにかく驚いた曲だ。「泣きたいほどの寂しさだ」を書いた、比類無い才能の持ち主。最愛の妻に逃げられて、どうしょうもなく酒浸りの自堕落な人生を過ごす。次の公演地に向かう移動の車の中で死んだときには、片手にアルコール中毒の治療薬、片手には酒を持っていたという無頼漢。
どうしてカントリー・ソングの出自を背負う曲が、こんなにモダンな演奏に変身することになるのか、未だによくわからない。この曲を歌おうと思ったときに、こういう着地点がケニー・ランキンに見えていたのだろうか。
2曲目は、おあつらえ向きの「Here That Rainy Day」。
外はもう暗い。また雨がひどくなっていく。
(大江田信)