Steve Miller スティーヴ・ミラー / Born 2 B Blue
彼岸と此岸という言葉がある。
たとえば
日本とアメリカ。
アメリカでは根強い人気を誇っているのに
日本ではさっぱりというレコードは
少なくない。
スティーヴ・ミラー・バンドは
結構、そういうバンドの代表格かもしれない。
「フライ・ライク・アン・イーグル」は
フリーソウルの世界で一時期持てはやされたことがあったが、
中古盤人気は長続きはしなかった。
ボズ・スキャッグス、
ベン・シドランなど
有能な顔ぶれが関わっていたという事実も、
なかなか彼の評価に奏功しない。
「ジョーカー」みたいな
とぼけたセンスのヒット曲はイイ味出しているんだがなあ。
それでもハイファイで仕入れたくなる
彼の唯一のLPがこれ。
ベン・シドランのプロデュースで
ジャズをやっている。
ジャズと言っても
80年代のスムース・ジャズ。
このスムース・ジャズというジャンルが
また日本のジャズ・ファンには受けが悪い。
しかし、
ジャジイなAORと思って聴けば、
実は大いに腑に落ちるのだ。
一曲目が
ディズニーでおなじみ
「Zip A Dee Doo Dah」。
このスムース・ジャズなヴァージョン、
大の大人が無くしたものを探しているような
甘くて苦い味わいがある。
そのとぼけ具合は
スティーヴ・ミラーの中ではブレていない。(松永良平)