Caravelli カラベリ / Greatest Hits ”Disque d’Or”

Hi-Fi-Record2007-11-07

 カラベリの来日コンサートのオープニングでは、いくたびか「弦のファンタジー(Fantasie Pour Cordes)」が用いられた。ファンにはお馴染みの一曲だ。
 その際に用いられた編曲も、また現在入手できるCDに収録される音源の編曲も、同じくストリングスを全面に用いたスコアになっている。
 切れ味のいい弦の音色が耳残る、鮮やかなアレンジだ。


 その響きが耳に残っていたので、レコードに針を落としながら、おやっと思った。耳なじみの無い「弦のファンタジー」が聞こえてきたからだ。
 すわ、これはテイク違いだぞと、ちょっとぞくっとした。華やかに踊るピアノの音色が聞こえて来る。この曲に、宮本啓氏が「チャールストンのフィーリンング」とするコメントを寄せていた、その訳がわかった。これはラグタイム風味の方向のアレンジによるテイクだ。


 曲の真ん中のパートのメロディが思い浮かばず書きかけだった譜面を、奥さんのイヴォンヌさんが拾っておいてくれたところから、後々に作品としてまとまった曲だという。ムッシュから、そんなコメントをもらったことがある。


 アメリカからフランスに渡ってきた、懐かしき戦前レヴュー音楽としてのジャズ。そんな味わいを好む節が、ムッシュ・カラヴェリにはあるのかもしれない。その扱いがうまいのも、自身がピアニスト出身だからだろうか。
 ランディ・ニューマンが書いた映画音楽のメロディ「ラグタイム」を、とても見事なオーケストレーションをもって演奏していたことも忘れられない。
 「弦のファンタジー」も「ラグタイム」も、どちらもからっとした後味がいい。(大江田 信)


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