Adamo アダモ / Olympia 67

Hi-Fi-Record2007-11-08

 オランピア劇場には、一度だけ行ったことがある。
 数日ほどのパリ滞在のうち、ぜひともオランピアに音楽を聴きに行きたいと思っていた。パリについてすぐにチケットを買ってみたら、それがミシェル・フュガンのコンサートだった。


 サーカスが歌った「ミスター・サマータイム」の作者が彼だ、ということくらいは知っていた。そして続いて発表されたサーカスが歌う「愛で殺したい」の作者でもあることも、記憶にあった。そのころ日本では彼のメロディが、思いもかけずヒット・チャートに上っていたのだ。
 調べてみると、これらの曲と共にサーカスがデビューしたのが1978年とある。となるとミシェル・フュガンを聞いたのは、翌1979年の夏のことだ。
 ぼくらは幸運だった。フュガンのショーは最高だった。


 この時期の彼のショーは、ミュージカル仕立てになっていて、大勢の仲間たちと共にステージ一杯を用いながらストーリーを進行させるというものだった。1979年は、貧しくも明日を夢見る心優しい一人の女性が、努力を重ねる中で周囲の理解と評価を得ていくというヒューマンな筋立てのドラマだったように思う。
 ショーの最後には、全員でレビュー風にそろってメドレーを歌い、そこに「ミスター・サマータイム」の原曲「Une belle histoire」のメロディが流れてきて、なんだかとてもうれしかった。
 翌日にはシャンゼリゼレコード屋に、アルバムを買いに走った。手に入れたのは前年のオランピア公演の2枚組ライヴだった。



 これはアダモの1968年オランピア公演のライヴ・アルバム。63年フランスでの大ヒット、日本でもおなじみ「雪が降る」が、聴衆の拍手と歓声で迎えられている。
 高い円形の天井。固い椅子。足早に通路を行き交う人々。木の肘掛け。開演前のざわざわとした雰囲気。数十年もの間、おそらく変わることの無かったたに違いない館内のたたずまい。
 あの夜のオランピアの断片的な記憶が蘇ってくる。
(大江田 信)


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