Eggs Over Easy エッグス・オーヴァー・イージー / Good ’N’ Cheap

Hi-Fi-Record2007-11-10

 79年の夏。オランピアでライヴを楽しむというパリ滞在を体験した後には、ロンドンに向かった。ベルギーのブルュッセルから夜行の個室寝台列車に乗ってドーバー海峡を渡ると、早朝のロンドンに着いた。
 ハイドパーク近くのホテルに荷物を置き、それから世界で一番大きな書店と言われていたフォイルで本を探した後には、マーキーにライヴを見に行った。会場に着いてみて、出演のバンドがウルトラヴォックスと知った。
 ウルトラヴォックスは、生きのいいバンドだなと思ったけれども、それほどの衝撃は受けなかった。むしろフロント・アクトのバンドが終わった後の幕間に流れたシド・ヴィシャスの「マイ・ウェイ」に打ちのめされた。


 いずれにしても僕はパンクのパの字も知らなかったというのが本当のところで、まだまだ市内にいっぱいあったレコード屋を巡っては、パンチのオリジナルや、ブリンズレイ・シュワルツのオリジナルをひと揃い見つけては、意気揚々としていた。



 エッグス・オーバー・イージーは、パブ・ロック・シーンから登場した気の置けないバンドのひとつだ。ブリンズレイ・シュワルツのメンバーのひとり、ニック・ロウを語るに欠かせないバンドだということを後々に知るのだが、この当時はただ単にジャケにピンと来て手に取った。
 人気の無い街角に、ぽっと明かりを灯すダイナーが描かれる。街角の明かりには、不思議な力がある。
 コーヒーが用意され、簡単な食事を取ることができる。ちょっとした会話が交わされる。そうして人心地を得る。
 そんな音楽がこぼれてきますよと、ジャケットが僕を手招いていた。 
 


 ジャケットの絵は、アメリカの画家、エドワード・ホッパーの1942年作品「ナイト・ホークス」(邦題「夜更かしの人々」)を原案としている。(大江田信)


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