Jo Stafford ジョー・スタッフォード / The Joyful Season

Hi-Fi-Record2007-11-12

ジョー・スタッフォードのアルバムは
オリジナルのジャケットで再発される可能性が低く、
蒐集価値があるぞという話を聞いたのは
十数年前だったかな。


蒐集価値云々よりも気になったのは
そこにあったエピソードの方が気になった。


いわく、
彼女の過去のアルバムの大半は
夫君であるポール・ウェストンと共同で
自分たちのもとに権利を買い集めてあり、
現状ではかつての発売元である
レコード会社はタッチ出来ないというもの。


その夫のポール・ウェストンは、
ジェントルなピアノと
優しくドリーミーなオーケストラ・アレンジで知られる才人。


だが、
このふたり、
どうも心の妙なラインで気があっているらしく、
音楽的な挙動がときどき不審になる。


そのもっとも有名な例が
音痴な女性シンガーと
これまた下手なピアニストのデュオ、
ジョナサン&ダーリン・エドワーズ名義での活動。
アルバムは3枚ある。


架空の冗談音楽夫妻としての活動に
彼らが何故そこまで熱心だったのか謎だ。


そして、この
落ち着いたクリスマス・アルバムにも
夫妻のいたずら心は及ぶ。


本作のコーラスは、
なんと全部ジョー・スタッフォード自身による多重録音。
そしてアレンジはポール・ウェストン。


リッチさよりも
どことなくインナーな密室感があり、
聴き込むうちに
クリスマスの暖炉の前にいたはずが、
どこか不思議な場所にいるような気がしてくる。


ポピュラー音楽と呼ばれる世界にあいている
いくつかの不思議な穴のひとつだと思う。(松永良平


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