Percy Faith パーシー・フェイス / Disco Party

Hi-Fi-Record2007-11-14

 パーシー・フェイス・オーケストラが「夏の日の恋」を演奏する60年代初頭の映像を見た時のこと。永く密かに愛してきたメロディの生演奏を見ることが出来るという楽しみと同時に、あの独特のサウンドの謎の一端でも解けるかもしれないという期待を持ちながら、画面に目を凝らした。
 「夏の日の恋」は、ポップス・オーケストラの系譜において、ストリングス・オーケストラとロック的なサウンドを掛け合わせた初めての作品だとする指摘もあるし、なにしろ1960年の2月21日にシングル・チャート1位に到達すると、その後の半年ほどもチャート内にとどまった大ヒット曲でもある。なにかしら時代の気分を切り取った作品であることは、間違いない。その一端を感じ取ってみたいと思った。



 画面を見ているうちに、オーケストラの編成に目が止まる。ヴァイオリンに16名が当てられているのになるほどと思いつつ、そのほかにフルート2名、そしてサックス、ギター、オルガン、ドラムと順に確認しながら、3人の演奏家が並んでホルンを吹いていることに気づいてびっくりした。



 バイオリンが奏でるなだらかで爽やかなメロディに、永遠の夏を思わせる遥かな響きが加えられている。そういえば、あれがホルンによる効果だったのかと腑に落ちだ。
 クラシックのフル・オーケストラ作品の演奏風景を見ていても、ホルン奏者を3人も並べる曲にはあまり出会わない気がするのだが、どうなのだろうか。とにかくピカイチに演奏が難しい楽器だということは、確かなようだけれども。


 この後に発表されるアルバム「Themes For Young Lovers 」(1963年)は、積極的に若い聴衆を対象者に迎え入れようとする転換点となった作品だ。「夏の日の恋」のヒットおいて見いだしたサウンド感や方法論が、アルバムの全体まで規模を広げたカタチで展開されている。従来のスタンダード中心の選曲とはまた別に、同時代のヒット・ソングを中心にした選曲の路線が、同作品からもうひとつ加えられることになった。


 「夏の日の恋」は、若者向き新路線のプロトタイプだった。それが成功し、大ヒットする動きの中で、新たな若いパーシー・フェイス・ミュージックの聴衆が育ちつつあることを見いだしたのだろう。
 「夏の日の恋」のサウンド感は、「品よく」「若い」サウンドとしてポジショニングされる。
 そうしたポジショニングが、その後の彼の音楽の起点となっていくようにも見える。
 


 パーシー・フェイスはクラシックの素養を武器に、ラジオ音楽の仕事で足がかりをつかみ、それから伸張するレコード・ビジネスに乗り込んで成功した編曲家・プロデューサーだ。
 古く40年代から音源があるが、年を経るごとにサウンドが若くなる。60年代に入り、ポピュラー音楽の主流がロックにシフトしていくにつれ、それははっきりする。
 レコード購買層の主流が若者にシフトしていくことに呼応したものなのだろうが、それにしても自身のキャリアの深まりと反比例するかのように、加速度的にサウンドの若さが進化するのだ。
 それがとてもおもしろい。


 「Disco Party」は、パーシー・フェイス、晩年、67歳の時の作品である。
 老体にむち打ってなんかいない。ポジティヴなサウンドだ。時代の音楽トレンドと楽しげに相見えている彼の姿が見えてくるような気がする。(大江田 信)



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