O.S.T. / Willy Wonka And The Chocolate Factory

Hi-Fi-Record2007-11-30

チャーリーとチョコレート工場」ではないんだ。


ぼくが書きたいのは
夢のチョコレート工場」。
1971年に初めて映画化されたヴァージョンの方。


おなじロアルド・ダールの原作を使っていても、
71年にジーン・ワイルダー主演で製作されたオリジナルと
05年にジョニー・デップ主演でリメイクされたものとは
天と地ほども受け止め方が違った。


チョコレート工場で働く
謎の異国人種ウンパルンパにしたって、
CGでごまかしてくれるなよと
リメイク版については泣きたくなった。


もちろん現代版には不気味な完成度はある。
だが、
オリジナル版の愉しさはなくなった。


ファニーなユーモア、
ハッピーなヴァラエティ
そういうものが現代的でないのだという
ティム・バートン監督の意図はわかる。


だけどさ、
最高の楽曲たちがなくなってしまったのは悲しいよ。


オリジナル版で好きなシーンはいくつもあるが、
チョコレート工場に入った一行が
いよいよ夢のチョコ製造部署に入るくだりが忘れられない。


ドアを開ける魔法のメロディを
ウォンカが弾くと
母親のひとりが思わず
ラフマニノフ」と合いの手を入れる。


そういうちょっとした機微の醸し出すよろこびを
リメイク版は見失っていると感じた。


もっとも原作者のダールは
71年版については
原作に無い改変が多いと
生前不満をもらしていたそうだから、
ぼくにとってのしあわせが
作り手にとってのしあわせなのだとは限らない。


それでも言いたい。
ぼくは「チャーリーとチョコレート工場」が好きなんじゃない。
夢のチョコレート工場」が好きなんだと。(松永良平