The Ray Conniff Singers / It’s The Talk Of The Town
「街の噂」。レコ・コニフが自身の名前を冠してアルバムを作るようになって、8作目の作品のタイトルだ。
この頃の彼のアルバムは、コーラスをカルテットくらいの小編成のものとしたり、クアイア・コーラスにしたりと、コーラスの編成が定まっていない。
このアルバムでは、おそらくダブル・カルテットくらいの編成の男女コーラスが、ユニゾン・コーラスで50sのヒット曲を軽快にカバーしている。
なにしろ大ヒット・アルバムを連発。他メーカーではレイ・コニフを真似たアルバムを作れ!と支持が下った(アレンジャーのボブ・トンプソンが回想している)くらいだから、その規模たるや相当なものだったのだろう。
だからこそ許された、様々に贅沢なトライアルだったのかもしれないと思う。
ただしコーラスを器楽的に扱うこと、この点に関しては彼は一貫していた。
スタートの時点から後々までずっとレイ・コニフを貫くアレンジ手法だ。
情緒的に過ぎない。大編成のときでもフレージング、譜割りなどを全員が揃える。
まるでブラスセクションのひとつのようにしてコーラスを扱う。
オーケストラのテンポ感が揺れることもない。一定に動いていく。
それが気持ちよさの源泉ではないかと思う。
久しぶりにキャリア初期のレイ・コニフを聴き、70年代以降の彼の音楽を聞き慣れた耳にとても新鮮な発見があった。
アレンジャーにおいても、三つ子の魂が百まで宿るのかなと思った次第。(大江田信)