Lynne Jackson And Mike Palter / Rememberings
彼女はピアノ、彼氏はベース。
身に付いたジャズのセンスを生かして、ポップ・ナンバーなどをさらっと決めている。格別に難しい演奏をする訳ではない。音楽がとても愛らしい。
コード進行を共通の言語として、それをキーワードに瞬間演算のようにしてメンバー間でアドリヴを繰り広げ合うことを可能とした50年代中期のバップ・ジャズ。それ以来、なにかしらジャズは進化しなければいけない音楽という思い込みのようなものが、演奏者側にも聞き手の側にも生まれてしまった。先頭ランナー競争が始まったのだ。
演奏の方法、音楽の組み立ての方法、メンバー間のコミュケーションの方法など、ひいていはジャズとは何かといった自問自答がそのまま埋め込まれたジャズが生まれたり。
もちろん尊い試みなのだけれども。
また少し違うところに立っているジャズ。彼らの歌を聴いていると、そんな風に思う。
器楽演奏のみによる音楽ではなくて、歌うための音楽だから?
たぶん、そうなのだろう。身をもってして歌うという行為は、おそらくどこか保守的な運動なのだ。(大江田)