Nina Simone ニーナ・シモン / Black Gold
クラシック音楽を目指していたのが、50年代の人種差別の壁に翻弄されて、ふとしたことからジャズを歌うようになったニーナ・シモン。
黒人であるという自らを覗き込む視線と、ユートピアを思い描く願いを交錯させつつ、希望をはらんだ数多くのアルバムを60年代に残している。
1月23日の日記に、歌うという行為は保守的な運動だと書いた。
自分で書いておきながら、読み返してみて言葉足らずだなと思う。これでは真意は伝わらない。
歌うということは、自らを明らかにすこと。そういう副作用を伴っている。虚実皮膜とでも言うべきかもしれない。
ニーナ・シモンは、聴衆に歌いかけつつ、自らに向けても歌いかける。内省的だ。歌うことは、自身が大切にして来たものを守ること。そして同時に彼女の歌声いは、自身の身を剥ぎながら歌っているかのような、痛ましさが内包される。
ニーナ・シモン歌うサンディー・デニーの「時の流れを誰が知る _ Who Knows Where The TIme Goes」。
静かなる結晶。(大江田信)
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