Stan Fields Sextet スタン・フィールズ / Bossa Nova

Hi-Fi-Record2008-01-27

「何がしたかったのだろう?」と思わせるレコードがある。


このスタン・フィールズのアルバムも、そんなレコード。


何がやりたかったって、そりゃ、ボサノヴァに決まってる。


いやしかし
これって、広義のボサノヴァじゃないって。


とりあえず知ってるツイストにラテン、グアパチャ、マンボ、ジャズの要素を坩堝にぶち込んで
「こーやったら、よかんべぇ。かっこいいべさ。」気分と衝動で実験。


やっている内に知らず知らず力が入った(個々の演奏はプロフェッショナル)、"頑張っちゃった"感が素敵だ。
グチャグチャのガチガチ。過去のムーヴメントにとらわれまくりの、新保守ならぬ、保守のミュータント的音楽がここに生まれている。
結果、21世紀になってもこんな音楽はなかなかお目にかかれない。


新しい流行、その潮流が生まれるときは、必ず無茶な解釈が生まれる。
異論・反論・オブジェクション。
「おっ」と自分では考えつかないような嬉しい閃きを、スタン・フィールズはみせてくれた。


「何がしたかったのだろう?」


「知らねーよ。とにかく俺イケてるっしょ?」


そんな返事を、スタン・フィールズのベロベロした過剰にセクシーなサックスの音色に想像した。


スタン・フィールズはこの一枚で消えてしまった(と思う)。
音楽生命を賭したチャレンジ、試みだったかは知らない。


"終わりの始まり"という言葉もある。
スタン・フィールズのこのアルバムは、手探りで何かをはじめるときに勇気をくれる音楽だ。


それにしても、この投げやりなジャケット・デザインは凄い。


(藤瀬俊)


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