Stan Fields Sextet スタン・フィールズ / Bossa Nova
「何がしたかったのだろう?」と思わせるレコードがある。
このスタン・フィールズのアルバムも、そんなレコード。
何がやりたかったって、そりゃ、ボサノヴァに決まってる。
いやしかし
これって、広義のボサノヴァじゃないって。
とりあえず知ってるツイストにラテン、グアパチャ、マンボ、ジャズの要素を坩堝にぶち込んで
「こーやったら、よかんべぇ。かっこいいべさ。」気分と衝動で実験。
やっている内に知らず知らず力が入った(個々の演奏はプロフェッショナル)、"頑張っちゃった"感が素敵だ。
グチャグチャのガチガチ。過去のムーヴメントにとらわれまくりの、新保守ならぬ、保守のミュータント的音楽がここに生まれている。
結果、21世紀になってもこんな音楽はなかなかお目にかかれない。
新しい流行、その潮流が生まれるときは、必ず無茶な解釈が生まれる。
異論・反論・オブジェクション。
「おっ」と自分では考えつかないような嬉しい閃きを、スタン・フィールズはみせてくれた。
「何がしたかったのだろう?」
「知らねーよ。とにかく俺イケてるっしょ?」
そんな返事を、スタン・フィールズのベロベロした過剰にセクシーなサックスの音色に想像した。
スタン・フィールズはこの一枚で消えてしまった(と思う)。
音楽生命を賭したチャレンジ、試みだったかは知らない。
"終わりの始まり"という言葉もある。
スタン・フィールズのこのアルバムは、手探りで何かをはじめるときに勇気をくれる音楽だ。
それにしても、この投げやりなジャケット・デザインは凄い。
(藤瀬俊)