The New Christy Minstrels / On Tour Through Motortown

Hi-Fi-Record2008-02-05

 ニュー・クリスティ・ミンストレルスには、60年代初頭に誕生し、その後にソロ・デビューを飾るケニー・ロジャースキム・カーンズ、バリー・マクガイア、テルマカマーチョのほか、MFQのジェリー・イエスターなど、幾多のアーチストを擁したバンドだ。今ではあまり日が当たることが無いものの、彼らの生長を追うのはなかなかに興味深いストーリーになる。


 当初は自然発生的なグループだったのだが、60年代の中頃にもなるとグループ名である「ニュー・クリスティ・ミンストレルス」を使ってビジネスする権利はプロダクション・サイドのジョージ・グリーフとシド・ギャリスに買い取られる。バンドのメンバーは彼らに雇われるミュージシャンとなった。


 元ニュー・クリスティのマイク・セトルとケニー・ロジャースが音楽的な中心を成すバンド、ファースト・エディションが結成され、レコード・デビューを飾るのが67年。このあたりの時期のファースト・エディションは、ニュー・クリスティとメンバーが重複しているし、音楽性も似通っている。
 このファースト・エディション、その後にカントリー界で大成功したケニー・ロジャースの在籍が災いするのか、今ではロック・ファンから敬遠され気味だ。マイク・セトルのセンスが主導するソフト・ロック作品がいい。もう少し注目されてもいいだろうに。


 そういえば初期のフォーク的な音楽を捨てロックに一歩を踏み出し、同時にメンバー顔ぶれの詳細がはっきりしなくなると、ニュー・クリスティのジャケットにはメンバーの顔写真が用いられなくなった。モデルをフィーチャーし、イラストが用られるようになる。


 このアルバムはモータウン・ナンバーを扱ったアルバム。68年に発表された。66年作品「New Kick!」と併せて、大胆でポップなアイデアに溢れた作品としてオススメだ。ご覧のようにジャケはイラストだ。


 そういえばファースト・エディションのアルバムでは、堂々とメンバー写真を使っている。もしかして、それってニュー・クリスティの舞台裏で被ったごたごたの反動?(大江田信)


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