Stephane Grappelli And David Grisman / Live
敬意をこめ共演を喜びつつ「The Man With The Violin!」とステファン・グラッペリを紹介するデヴィッド・グリスマンのアナウンスから、アルバムは始まる。
グリスマンたちが始めたジプシー・ジャズ風味満点のドーグ・ミュージック。そこに本家中の本家、ホット・クラブ・オブ・フランスのステファン・グラッペリを迎えたのだから、嬉しさもひとしおだったのだろう。
ここで聴かれる音楽はブルーグラスのサウンドに、ジャズ・ヴァイオリンを重ね合わせたと考えればいいのだろうと思い込んでいた。
ところが改めて聴き直してみて、その表現は間違いではないけれど、決定的なポイントが抜けていることに気づいた。
なぜならこのアルバムを流れるのは、4ビートだからだ。
ブルー・グラスは2ビートの音楽である。2ビートゆえの絶妙の間が、グルーヴを生み出す音楽だ。
ところが、これは4ビート。ブルーグラスとはグルーヴが違う。
ヴァイオリン・ジャズを、ブルーグラス楽器で表現したアルバム。これが正解だ。
言い換えればブルーグラスが4ビート・ジャズに歩み寄った音楽なのだった。
そして、もうひとつ気づいたこと。
スリム・リッチーが主宰するレーベル、「Ridge Runner」の作品、例えばBarry SolomonのアルバムやDan Huckabeeのアルバムは、4ビートが全編を貫いている。
それがブルーグラスにとどまらない、むしろ、だからこそジャズを聴いているかの気分に誘うのだということ。
なんだ、そうだったのか。
ブルーグラスとジャズが同床異夢だと、今では当たり前のようにしてぼくは考える。
それにしてもこのレコードこそ、そうした事実を指し示すレコードだったのだと、今更のように気づいたのだった。
ビフ・ローズの笑顔を練習中の大江田がお送りしました。(大江田信)