Grady Tate グラディ・テイト / After The Long Drive Home

Hi-Fi-Record2008-02-12

 プロローグが終わると、アルバムのタイトル曲が流れ始める。
 イントロに続いて、渋い声の語りが聞こえる。
 どうも女性に語りかけているようだ。「Long Driveを終えて、家に着いたよ」とつぶやくように言う。いましがた別れて来た女性に向けて、独り語りをしているのかもしれない。



 ほどなく「TV ディナーを温める」というフレーズが耳に入って来る。
 主人公の寂しさ、やるせなさを感じさせる一説だ。たぶん彼は、いま、一人暮らしなのだ。



 たとえばシチューやピザやステーキ、パスタなどの冷凍食品を、電子レンジで温める。マッシュ・ポテトや温野菜などの副菜が付いていることもある。それらがまとめて一つのワン・プレート・ディッシュのようになっていることもある。
 電子レンジでチン。
 そうして出来上がった夕食をテレビを相手に、一人で食べる。
 これがTV ディナーだ。いかにもアメリカらしい。



 アルバムには、一人暮らしの男の気分、あるいはうつろを歌う作品が並ぶ。カーテン越しに外見ている裏ジャケットのグラディ・テイトの写真。それがいかにもよく似合う。
 それでもアルバム終曲一つ前は「I'll Try Again」。そして終曲はなんと「Suicide Is Painless」。
 ほろ苦い味をたたえるグラディ・テイトの声が響く。(大江田信)


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