Fifth Avenue Band / Fifth Avenue Band
優れた才能が集う、かけがいのない一瞬が産み落とした音楽という表現は、こういうアルバムを語るときにのみ許される修辞ではないかと思う。
かつてぼくは、こんな風にフィフィス・アベニュー・バンドの事を記した。
「フォーク・ロックやラテン、R&B、ブラス・ロックなどがふっくらと一体化した音楽は、優れて柔軟な感性が響きあいながら写し取った60年代後半のN.Y.の音楽地図そのもの。都市に生まれ育ったシティ・ミュージックだった」。
今でもこの気持ちに変わりは無い。
さまざまに触手を伸ばしていた彼らの音楽への興味が手元に引き寄せられ、そして自らのものとしてのびのびと表現されている。
表現が自前であること、それが誇らしいことなのだということ。
彼らの音楽を聴いていると、いつも思いがここに至る。
高校時代にジャケ買いしたレコードでもある。
ボク自身を一瞬にして十代に連れ戻すレコード。そし感性の研磨剤みたいなレコードだ。(大江田信)