Lani McIntire and His Hawaiians / 不滅のハワイアン 名盤シリーズ

Hi-Fi-Record2008-03-10

 先日、店頭に見えた長年ハワイアンを聴いているお客様が、「ハワイアンはコンボが一番良いんだ。ダンスバンドはいかんなあ」とおっしゃった。なるほどなあと思いながら、同時にふと思いついたことがあった。


 1930年代も後半に入るとラジオ放送の普及とホテルなどの求めが合わさった形で、ラウンジやボール・ルームからライヴ演奏をするバンドの生中継が盛んに行われるようになる。
 スリー・サンズなどは、そうして人気を得た代表的なグループだ。
 同時にそれはマイクロフォンの出現の呼び水となり、バンドに専属シンガーが迎えられることにもつながった。
 フランク・シナトラはそうして登場した代表的なシンガーだ。


 演奏会場が大きくなればなるほど、バンドが演奏する音楽は、ダンス・ビートを強調するものとなる。ダンス・ホールの専属バンドといった意味合いも、生まれ始める。音楽ビジネスの規模も大きくなっていった。


 こうした経緯をだどってメジャーになった音楽は、数多い。ザビア・クガートなどのラテン、ボブ・ウィルスなどのカントリー、そしてグレン・ミラーなどのジャズ。ハワイアンも同様だ。ハワイアンの代表的なクラブ、ニューヨークのレキシントン・ホテルのハワイアン・ルームでは、ハワイアンがダンス・バンドの形態で演奏されるようになった。
 ダンスバンドのスタイルを取る事で、大きなビジネスの場に出て行ける。
 しかし同時に音楽の微妙なニュアンスの表現を失う事にもなる。
 従来型のコンボ演奏が好きなファンは、だからダンスバンドはつまらんということになる。 



 時代は1930年代の後半、同時期の本土ハワイアンを絶妙に捉えたコンピレーションがこれだ。監修と解説は早津敏彦氏。
 必ずしもダンスバンド・タイプのハワイアンがつまらないとは思わないぼくには、両方とも楽しめ、しかもその違いを実感することが出来て、とても勉強になる。ハワイアンがジャズと相見える様子も、しっかりと聴くことが出来る。
 ただし早津さんもコンボ演奏の方がお好きと見えて、ダンスバンド・スタイルのハワイアンの収録は多くない。こうしてレコードを聴けば聴くほど、そのお気持ちもわかるようになる。(大江田信)


Hi-Fi Record Store