Homer And Jethro ホーマー&ジェスロ / Live At Vanderbilt U.
ホーマーとジェスロとは、漫談バンド。幕間に登場し、ひとくさりジョークを飛ばしながらスカッと一曲演奏してステージを走り去る。なんてのがお似合いのバンドと思われて来たし、それも間違いではない。
これはヴァンダービルド大学でのライヴの模様。ヴァンダービルドは、ナッシュヴィルにある南部のハーバードと言われている名門大学。グランド・オール・オープリーの常連だった二人が本拠としていたナッシュヴィル、そのお膝元でのライヴということになる。お笑い有り、演奏有りのステージをそのまま収録している。
ジャケットはライヴ・ステージを後ろ側から撮影したもの。手にとってみるとよくわかるが、二人が手にしてるマンドリンからもギターからもケーブルが出ていて、アンプに差し込まれている。レコードが制作された1968年の時点で、エレクトリック・マンドリンってのも作られていたのだろうか。ジェスロ・バーンズの手に握られているのは、Fタイプのマンドリン。もしかすると彼の独自のアイデアなのだろうか。
ほかのホーマー&ジェスロのアルバムで聴かれるマンドリンの音色とはちょっと違う、キンキンした響きが聴こえるし、ライヴの会場でのみ用いていたマンドリンなのかもしれない。
長いケーブルがだら〜んとぶらさがっていて、その向こうに見える客席では、だれもが大きく笑っている。ふたりの足下には、譜面が散らかっている。
おもしろいジャケットだなあと思う。
ボーカルはいささかよれっとして時には情けない感じを振りまくが、それも芸風なのかも。楽器演奏の実力たるや、素晴らしい。インストルメンタルのみを全面的に収録したアルバムは数多くないことは解っているのだが、手当り次第に聴いているうちに、こういうアルバムにも出会ってしまう。
「Jitterbug Waltz」の素晴らしさは言うまでもないが、ホーマーのしゃべりのうしろでジェスロがさらっと弾いている「日曜はダメよ」の軽さとか、そのままメドレーでつなぐジャズ小唄風にして二人でハモる「Rain」とか、バカテクを披露する「Crazy Mixed Up Song」などに思わず悶絶した。(大江田信)