John Fahey ジョン・フェイフィ/ After The Ball
女性フォーク・ブルース・シンガーのエリザベス・コットンが弾くスリー・フィンガー・ギターを、まるでミニマル・ミュージックのようだと評したのは、鈴木惣一郎氏だった。
確かにいわれてみれば、そうかもしれない。
一定のリズムで一定パターンのフィンガリングによって、よどみなくギターが演奏される。
実は多くのフォーク・ミュージックでは、こうした伴奏方法が用いられるが、なかでもエリザベス・コットンのギターには感情の起伏が盛り込まれず、ある種の諦念に裏付けられているかごとく、深く穏やかに淡々としている。
今風にいえば、エリザベス・コットンのギター演奏も、一種の"ループ"と呼ぶことが出来るのかもしれない。
このところに登場したフォーク系のシンガー・ソングライターたちのなかに、一定のリズムパターンをバッキング演奏に用いない人がいることに気づいた。
例えばこのあいだの買付け中のとあるレコード・ストアで、イン・ストア・ライヴをしていたフォーク・シンガー。つい目に止まってCDショップで買い込んだ女性SSWの新譜など。
彼らは、ループ的なバッキング演奏から解放されようとしているのかもしない。自ら弾き語る際に用いているギターが、アクセントをつけるパーカッション風だったり、歌詞に呼応してデコレーションするために用いられたりするのだ。
ただし音楽の中にループが見いだせないのかというと、そうではない。歌を歌っている彼の体の中で一定のグルーヴがリズムを伴って生きていることがわかる。いわば伴奏いらずのボーカルとなっているのだ。
ギターの用いられ方が変わり始めたのかどうか。もしも変わり始めたのだとすると、それはループから解放されたいと思ってのことかどうか。これからを注視したいと思う。
エリザベス・コットンのギターの魅力を見いだし、早くから敬意を捧げていたのが、ジョン・フェイ。
難解なレコードが多いとされる彼の作品でも、このアルバムはとても親しみやすい一枚だ。
スリー・フィンガー・ピッキングのギターの魅力を、気楽に楽しむことが出来る。(大江田信)