The Guess Who ゲス・フー / The Guess Who

Hi-Fi-Record2008-03-22

カナダ出身のポップ・ロック・グループ、ゲス・フーの
最高の一曲と言えば
「ラーフィン」を挙げたい。


さわやかでせつなくて
ソフトロックとしても十分通用する初期の名曲。


同時期の「アンダン」という曲も良いのだが、
曲の後半になると
ヴォーカリストが妙に荒ぶりはじめて
いけません。


買付け中、
ラジオでこの曲が流れると
大江田さんが「これ誰?」と
きまって反応する。


「ゲス・フーです」と答えると、
「へー、そうなの、初期はいいんだね」とひとしきり興奮。
しかし、曲が進むにつれ、
だんだん興奮は静かになってゆく。


まるでソフトロックが
70年代という時代にするすると飲み込まれてしまう
その瞬間を人間の反応で表したかのよう。


だが、その一方で
忘れてはいけないと思うこともある。
リアルタイムの70年代初め、
ゲス・フーがハードな音楽性に転じたことを
失敗だと感じたひとはほとんどいなかったということだ。


時代に対する鋭い嗅覚と反応は
後世に正解だけを残すわけじゃない。


そう思っていなかったら、
行く先をああだこうだと案じてばかりで
どこにも行けなくなるんじゃないかと思うのだ。


ゲス・フーは
その後、大ハードロックな「アメリカン・ウーマン」で
一大ブレークを果たす。


時代への反応として
あれは大正解だったと言えるのだろう。


あのイモっぽい曲にも、
そう思って聴くと
感じる部分があるのだ。


このアルバムに収められているのは、
「ラーフィン」よりもちょっと前、
彼らの結成直後、
カナダ・ローカル・バンド時代の記録。


どう進もうかと
身をすぼめながらも
ダッシュをうかがう反射神経が垣間見える。(松永良平


Hi-Fi Record Store