Wednesday Morning, 3AM 水曜の朝午前3時/ Simon And Garfunkel

Hi-Fi-Record2008-04-16

 先週の日記に引き続き、いまいちどサイモンとガーファンクルのアルバム「水曜の朝午前3時」から。


 A面の3曲目に「ブリーカー・ストリート」という作品が収められている。
 イースト・リバーから流れてくる霧が人々の眠る小道を満たして行く様を描くシーンから始まる、アコースティック・ギターの響きが印象的な小品だ。ポール・サイモンの後の作品、「マイ・リトル・タウン」でも同様な街の描写が見られる。ごく普通の街のごく普通の一日。幸せに彩られているというよりも、どこかしら悲しみを秘めているように見受けるたたずまいが、さりげなく描かれる。


 おそらく、というよりも間違いなく、これはニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジのブリーカー・ストリートだろう。60年代の初頭にフォーク・シーンガーやビートニック詩人たちが集った街を走る通りの名前だ。グリニッジ・ヴィレッジを語るシンボリックな名前の一つでもある。


 いつの日か、ブリーカー・ストリートに行ってみたいと思っていたら、ほんのひょとしたチャンンスとともにそれは巡って来た。
 買付けの途中、ニューヨークで過ごす時間に余裕ができて、グリニッジ・ヴィレッジに行くことが出来た。
 街の中心にあるワシントン・スクエアの近くに車を止めて、しばらく歩いた。
 大学があり、カフェがあり、イタリアン・レストランがあり、ホテルがあり、バーがあり、レコード店がある街だった。雑然としていて、活気に満ちていた。



 ブリーカー・ストリートとマクドゥーガル・ストリートの交差点に立って、やってくる車を避けながら、フレッド・ニールのアルバム「ブリーカー&マクドゥーガル」は、どちらの方角からどちらに向かって撮影したのだろうと思いつつ四方を見渡した。
 しばらくくるくると見渡したのだけれども、答えは出なかった。
 それでもブリーカー・ストリートとマクドゥーガル・ストリートの交差点に立つ時間を持ったという事実がうれしかった。



 このアルバムには、彼らの音楽が、当時の若い世代の知的トレンドだったフォークに向かって差し出されていることを示す、くっきりとした刻印が散りばめられている。サウンドのみならず、用いられる言葉の断片がきらっとした光を放っている。(大江田 信)


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