Dancing Voices ダンシング・ヴォイシズ / Go Latin

Hi-Fi-Record2008-05-28

 繰り返しアメリカ国内で起こったラテン音楽のブーム。このアルバムは、1963頃から流行したボサノーヴァの隆盛に呼応してリリースされたアルバムだ。


 どうしてアメリカ国内でラテン音楽のブームが繰り返されたのか。そこには、単に音楽流行とだけでは言い切れない裏事情が潜んでいるようだ。
 1920年代に誕生したSPレコードというメディアへの様々な音楽の移し替えのなかに、早々にラテン音楽が取り上げられているし、1930年代に入るとディズニー映画がブラジルのサンバやメキシコのメロディを採用するようになる。



 本アルバムの冒頭に収録された「ブラジル」は、1939年にブラジルのピアニストであり、作曲家のアリー・バゾーロが書いた作品。1942年にはS.K.ラッセルによる英語詞が加えられ、1943年にディズニー映画「ラテン・アメリカの旅」の主題歌として用いられ、これをきっかけに大ヒットしている。
 翌44年には「三人の騎士たち」が制作され、こちらではアウグスティン・ララ作曲の「ソラメンテ・ウナ・ベス」が主題歌として用いられた。


 これらの映画については、国内のラテン圏出身の移民に親アメリカ的な気運を盛り上げるため、政府筋の意向を受けて制作されたとする記述もある。残念ながら映画そのものを見ていないので、その真偽のほどはよくわからないのだが、いずれにしてもアメリカでは、繰り返し繰り返しラテン音楽のブームが起きた。


 アメリカ国内に蓄積されたラテン音楽を、直近のボサノーヴァを含めつつ、さらっと振り返るアルバムがこれだ。見事なまでにアメリカ風に翻案され、ライトな気分のサウンドになっているあたりが制作者たちの巧みな技の見せ所。(大江田信)


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