The Gene Rains Group ジーン・レインズ / Rains In The Tropics

Hi-Fi-Record2008-07-04

とあるアメリカのレコード屋さんで買付をしていて
ジーン・レインズのレコードをレジに置いたら、
店主が大きな声で話しかけてきた。


「要するにさあ、
 おまえらはアーサー・ライマンみたいだけど
 アーサー・ライマンみたいじゃないのが欲しいんだよな。
 レイ・コニフみたいだけどレイ・コニフじゃないやつとかさあ」


この店主は話好きで声が大きいのが玉にきずだが
センスがいい。


彼が言っているのは
「良い亜流」や「おもしろい二匹目のドジョウ」というものが
レコードの世界には存在しているのだということだ。


そして、その亜流の極まったブツは
本物の熨斗つきでふんぞりかえった王様を
ときに音の力で倒すことがある。


わかっていても、
これを認めるのは難しい。


何故って、
この世界では
本物の価値を認めることの方が
商売になってきたわけだもの。


そしてぼくたち日本の買付隊は、
その価値の差から生じる隙間を突いて
アメリカ人が知らないもの、
亜流と思って価値を認めていないものを
買い続けてきたんだもの。


ところが、
アメリカのレコード屋で、
長年続いてきたその価値体系が崩れつつある。


別の店で、
買い取りを持ち込んだ客に対し、
店主はきっぱりこう言っていた。


「わるいけど、
 もうクラシック・ロックと
 普通のジャズはあんまりいらないんだよね」


これからアメリカの中古レコード屋の品揃えはきっと面白くなるだろう。
でもそのときにぼくたちが買うレコードは
どう変わっていくのだろうとも考える。


というわけでまたまた買付に行ってきたんです。
商品の変化をお楽しみに!(松永良平


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