James Last ジェームス・ラスト / Guitar A-Go Go
ギターでアレンジした「フニクリフニクラ」を聴く。
小学3年生くらいだったか、
クラスで一芸発表会(?)のような催しがあり、
ある女子が壇上に立った。
かわいいと
ひそかに男子が言い合っていたコだった。
皆の前に出てきた彼女は
「歌をうたいます」と言って、
息を吸った。
アカペラだった。
歌いだしたのは
「とざーんでんしゃーが〜」で始まる不思議な歌だった。
一本調子で上昇するかと思うと
不意にのっぺりと平行移動、
まるでスイッチバックのようなメロディを持つその曲が
「フニクリフニクラ」だった。
息継ぎをしながら
異国の登山電車の歌をうたう彼女を見て
たぶんぼくはそのとき短い初恋に落ちたと思うのだが、
そのあと、どうなったのかは記憶にもないし
なんの記録もない。
ぼくが彼女を好きになったことすら
だれも知らない。
「フニクリフニクラ」だけが
今でもぼくを
ひゅーひゅーと囃し立てているような気がする。
まあ、それだけの話。(松永良平)