Sandy Nelson サンディ・ネルソン / ”In” Beat
ロスアンジェルスの記憶すべき音楽的なあれこれを一つにまとめた冊子、「The L.A. Musical History Tour」をペラペラと読んでいると、サンディ・ネルソンの交通事故についての記述を見つけた。
「ディキシー・キャニオン・ロードに向かって西側に曲がっていくマルホルランド3番地あたりで、1963年4月22日午後3時頃、自身のオートバイが前を行くスクールバスにぶつかりそうになっていることにサンディ・ネルソンは気づいた」とある。そのままバイクはバスに接触して彼は左腕をこすり、そしてバイクはバスの下にもぐり込んでしまい、右足をバスの後輪に挟んだという。
ぼくにとって、サンディ・ネルソンは謎の人だ。なにしろファン・クラブを持っていたドラマーなのだ。同書にもこの当時、もっとも有名だったロックン・ロール・ドラマーと解説が添えられている。
だってドラマーにファン・クラブがあるなんて、不思議じゃないか。スチール・ギターほどではないにしても、椅子に座ったまま演奏していて、その奮闘ぶりが客席からはよく見えない。恍惚とした表情でチョーキングするギタリストの顔を思い浮かべることが出来ても、恍惚としたドラマーの顔は想像するだに難しい。
どんな会報が発行されていたのだろう。どんなファンの集いが持たれていたのだろうと考えながらレコードに針を落とすと、パワフルで豪快なドラム・サウンドが流れ出して来る。通例の同時代のレコードよりも、ドラムの大きさが大きく聞こえる。
彼は、この交通事故で右足を失った。
しかし翌年には再起を果たしている。
ちなみにこれは事故後のレコード。
事故前のレードと、後のレコードでは明らかにドラムの叩き方に違いがあり、ファンの方は聞くだけでそれがわかるそうだ。
サンディ・ネルソンが接触したスクール・バスには、13歳のボニー・レイットが乗っていたという。
さぞかし彼女は驚いたことだろう。(大江田 信)