The New Lost City Ramblers / String Band Instrumentals

Hi-Fi-Record2008-07-23

 ちょうどこのアルバムを店頭に出す作業をしているとき、来店されていたお客様に指摘をされた。
 「New Campton Racesだけどさ、キミたち演奏してたんだよ。キミと佐久間クンで」。



 えっ? 思わず耳を疑う。だって、あの「New Campton Races」ですよ。簡単な曲じゃないんですよ。
 リード・メロディを取るのがマンドリンだってことは、ボクがマンドリンを弾いていたの? まさか。



 「なのにさ、この曲の前に入っているThe New Lost Train Bluesと勘違いしていてさ、今からThe New Lost Train Bluesを演りますって言うの。勘違いしてたんだよ」。



 そうかなあと言いながら、レコードに針を落として聞いてみる。
 するとその昔のことを知る者が同意する。「演ってた。覚えてる」。
 形勢不利だ。


 こんなに難しいマンドリンを自分が弾いていたと思っている人がいることに、驚く。そんなはずは無いんじゃないの?という懐疑は拭い切れないのだけれども。



 「佐久間クン」、正しくは佐久間順平、そしてボクとは、高校時代から大学4年まで「林亭」というバンドを続けていた。
 小林政広という男が仲間にて、いつも小林の家にたむろしていたことがきっかけとなったのか、とにかく林亭などという不思議な名前のバンド名になった。
 佐久間とボクが18歳のときに、ふたりでアルバムを作った。
 大好きだったNew Lost City Ramblersが在籍していたFolkways Labelのジャケットの流儀を、そのまま踏襲してデザインとした。
 今や小林はカンヌの赤絨毯を歩く映画監督になり、佐久間順平はテレビ、ラジオ、ステージ、CDで活躍する音楽家となり、ふたりとも現役でバリバリ活動している。



 その「林亭」が、アルバムの制作をすることになった。
 なんと37年ぶりのセカンド・アルバムを作ることになった。
 こういう時の文章は、ご期待くださいといって締めるのが筋なのだろうが、とてもそんな気分にはなれない。
 はたしてどうなることか。


 レコーディングは、来週から始まる。(大江田信)


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