Rod McKuen / Back To Carnegie Hall With Stanyan Strings

Hi-Fi-Record2008-08-23

 ここに収録されている「Jean」は、映画「ミス・ブロディの青春」のために書かれた作品で、1969年のアカデミー主題歌賞にノミネートされた大変に美しい曲だ。同時代のヒットをインストルメンタルにしてまとめたイージー系のアルバムに、数多い収録が見いだされる。レターメンのカバーもいい。アメリカでの支持の広さがわかる。


 歌詞を読み聞いていると、映画の主人公、ジーン・ブロディに歌いかけているものと気づく。それも彼女を励ますような、外に出ておいでよと呼びかけになっているあたりから、劇中でジーンが置かれているニュアンスがなんとなく伝わって来る。


 2番の歌詞に「帽子を脱いで、夢を見よう、夢見よう」というフレーズがある。映画を見ていないのでなんとも言えないのだが、もしかするとジーンがかぶっている帽子は、60年代の後半期のヒップな感性にはクラシックすぎると映るものだったのかもしれない。古くさい女性とでも言われそうな。


 ぼくの中でだんだんとジーンのキャラクターが出来上がっていく。
 スクエアで物怖じしているジーンを、もっと広い場所に出ておいでよと呼びかける歌とすると、全体の意味がすっと通る。


 ジーン・ブロディが代表する、やや時代遅れな女性達に対して、新たに用意されつつある広場に出てくるよう、ロッド・マッケンは誘いかけているのかもしれない。
 優しい声で。(大江田信)
 


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