Baby Washington / The Soul Of Baby Washington

Hi-Fi-Record2008-09-06

 アルバムを手に冒頭曲「Only Those In Love」のクレジットを見ると、作曲がベルケンだった。
 通称ベルケンこと、ベルト・ケンプフェルトは、50年代からドイツのポリドールで制作A&Rを努め、また同時に自らの作品で数々のインストルメンタル・ヒットを放った人物。いち早くビートルズの才能に気づき、ハンブルグ時代の彼らの演奏を録音した事でも知られる。


 「L-O-V-E」がナット・キング・コールで、「夜のストレンジャー」はフランク・シナトラで、「マルタ島の砂」がハーブ・アルパートとティファナ・ブラスでヒットしたりと、彼の作品は幾たびかアメリカのヒット・チャートに顔を出している。ソングブック・アルバムとして作曲家ベルト・ケンプフェルトのメロディをまとめた作品もいくつか見かける。


 この時期のドイツの音楽ビジネスとアメリカのビジネスとが、どのように繋がっていたのかよくわからないのだが、彼ほどに繰り返しアメリカ国内で作品が取り上げられた外国のメロディ・メーカーもそう多くはないのではないかと思う。どうにもその辺りが不思議だ。なにか訳がありそうな気がするのだが。


 ついにはこんなソウル・シンガーのアルバムに、ベルケンのメロディを見つけてしまった。ベルケン自身が関わったサウンドには、一聴してわかる特徴があるが、ベイビー・ワシントン版には、そうしたかけらもない。それでもベルケンのメロディのクセは、節々から聴こえてくる。ベルケンの側から眺めてみると、それがとても新鮮だ。
 もちろんちゃんとしたソウルなボーカル作品に仕上がっているところもまた、絶妙である。(大江田信)
 

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