Try To Remember / The Brothers Four

Hi-Fi-Record2008-10-09

 緑の牧草と黄金色の麦の穂を思い出して、けがれの無かったあの頃の9月を思い出してみて、という歌詞に始まる「Try To Remember」を収録したアルバム。ポピュラー・コーラスの世界に足を踏み入れ始めたブラザース・フォアによるなめらかに流れるハーモニーが美しい。
 9月中に取り上げようと思いながら、忘れていた。クルト・ワイルの「セプテンバー・ソング」と並んで、9月を代表する曲のひとつなのに。


 西海岸シアトルにあるワシントン大学のグリー・クラブ出身の4人組。学生時代にはセイクレッドやゴスペル等を歌っていた。
 このアルバムでも「そして今は」や「野生のエルザ」などのポピュラーなレパートリーを取り上げているが、こうしたコーラス技術の基礎となっているのは、おそらく大学時代の経験だろう。
 フォークを歌うようになったのも、コーラスのレパートリーを探すプロセスからと想像される。アメリカ版のダーク・ダックスというか、若きデューク・エイセスというか、やわらかなタイム・ファイブというか。そういえばタイム・ファイブは、ハワイアン・コーラス出身だったっけ。


 「Try To Remember」の後半部分では、なごやかだったあの9月の炎を、そろそろ雪が降り始める12月に思い出すのも素敵だとうたう。
 傷ついた事の無い心なんて空っぽなのさ(Without a hurt, the heart is hollow)と、アフォリズムも盛り込まれる。


 あっ、しまった、12月に取り上げれば良かった。(大江田 信)


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