Rod McKuen ロッド・マッケン / Alone...

Hi-Fi-Record2008-10-11

 いくつかの例外を除いて、ライヴ・アルバムよりもスタジオ録音の方が好きだ。どうしてなのかなと考えているうちに、ドキュメンタリーという言葉に行き当たった。


 ライヴ・レコードはドキュメンタリーなのだ、たぶん。考えてみれば、当たり前なのだけれど。


 となるとドキュメントされている音楽よりも、ぼくはスタジオで作り込まれた音楽の方が好きなのだろうかと考える。かつてスタジオで「せ〜の」で録音されていた音楽が、オーバーダビングをしたり、編集をしたり、再構成をしたりしながら、加工性を取り込んだプロセスを経て制作されるようになる。これがこの半世紀にわたる録音の歴史。グレン・グールドの映像を見ていても、それがわかる。


 ドキュメンタリーではない音楽。
 言い換えれば偶発性を重んじるのではなく、よく考えられ練り込まれた音楽。
 たしかに僕は、そういう音楽の方が好きなのかもしれない。


 しかしそういう思いが、こうしたアルバムを聴いているうちに、また新たな回路を辿り始める。


 ロッド・マッケンはアルバムの数が多い人だ。
 そのどれもとは言わないまでも、多くは音楽ヴィジョンがはっきりしていて、少なくとも事前に周到に準備されていたことがわかる。
 なのに、彼のヴォーカルがいかにもアドリヴというか、その場に生まれて行く音楽との化学変化を濃密に閉じ込めたものとなっていることがある。
 このアルバム言えば、たとえば「青春の光と影」。詩の朗読をするかのような、歌うとも歌わないともつかない微妙な歌唱が、揺れ動く。音楽が生まれ出る瞬間を共にしているように歌われる詩句。
 聞きながら、たまらない気持ちになる。


 こういうドキュメンタリーもある。(大江田 信)