Cafe Noir カフェ・ノワール / Cafe Noir

Hi-Fi-Record2008-10-12

 クリスマス・セールに湧くスーパーの片隅でタキシードを着たタイ姿の初老のオジサン3人組が、洒脱なギター・スイングを演奏している現場に行き当たった時には驚いた。あんまり上手いので、たぶん口を開けて聞いていたのだろう、そのうちの一人が僕にバンドの連絡先を書いた名刺をくれた。仕事があったら電話を頂戴というココロだ。


 ニュ−ヨーク州イサカに暮らすジョニー・ラッソに会いに行った時のこと、別れ際に次はどこの街に行くんだと彼が聞く。ええっとどこだったけと考えていると、駐車の場所に気をつけろよ、イサカは安全だけれどもアメリカはそういう場所ばかりじゃないんだと続けた。ニューヨークなんてとんでもない。イサカは良い街なんだという。
 彼はイサカの街で音楽を演奏して、暮らしている。街の誰もが彼の友人だ。



 アメリカでは、どこの街にも地元に密着したミュージシャンがいる。
 全米的な表舞台に立つ事は決して無いけれども、街のクラブやフェスティバルに出演して、自身の音楽の演奏を続けている。
 そういうミュージシャンのレコードやCDは、その街の周辺に行かないと手に入らない事が多い。


 カフェ・ノワールは、テキサスはダラスのジャンゴ・タイプのスイング・バンド。
 自在なテンポでメロディを繰り出すバイオリンとアコースティック・ギターを中心に、難なく変拍子を遊びながら、クラシックからスイング、そして東欧の舞踏音楽まで、楽しげに演奏している。相当に高度な内容のアンサンブルだ。
 おそらくバイオリンの彼女に、クラシックの素養があるのではないか。


 裏ジャケには、レンガの壁の前に並ぶメンバーの写真。彼らが演奏しているカフェの前?
 買付けの旅の途中に、こんなバンドに出会えたら。
 でもたぶん、ダラスの街に行かなければ演奏を聴けないのだろう。彼らは、今も現役だ。(大江田信)


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