Fabienne Thibeault ファビエンヌ・チボー / Fabienne Thibeaultlt
朝刊を広げたら、来年に東京都調布市で、カナダのケベック地方の映画をまとめて上映する映画祭の記事が出ていた。
そこに付随するようにケベック地方の紹介コラムがあった。
人口770万人が、日本の5倍もある広さの地域に暮らしている。そして公用語は、フランス語と書かれていた。
モントリオールに向けて車を走らせていて、ケベックに入ったなと気づくのは、道路標識が突然フランス語になるからだ。
東西南北、右左にはじまり、なにからなにまでフランス語に変わってしまう。ガソリンスタンドでちょっとしたお菓子や飲み物を買うときも、フランス語。朝食のメニューもフランス風。中華料理屋さんに入ってオーダーをする時も、フランス語。ホテルのフロントでもフランス語。もちろん、おそらくほとんどの人が英語を話せるのだろうが、彼らの方から進んでは英語を話してくれない。
なるほど、公用語はフランス語だったんだと、初めて知って腑に落ちた。
ケベックの音楽には、ずっと興味がある。そのくせ、それほど真剣に調べたことはないのだけれども。
アメリカに近いことから、アメリカン・ポップスの影響を適度に受けていることからか、ぼくには自然に受け止められる。本家フランス人音楽家達が、時としてみせるアメリカ音楽へのなんとも言いがたい屈折が、ケベックの音楽には感じられない。
ファビエン・ティボーの音楽は、かわいい。フランス語の持っているやわらかい語感が、生きている。
ぼくの思うところのケベック音楽は、彼女がつくり歌う音楽と言葉が併せ持つリズム感が素直に象徴している。(大江田信)