Thelonious Monk / Monk Big Band And Quintet In Concert

Hi-Fi-Record2008-12-05

先日、
日本のテレビ局で長く音楽の仕事をされていた方と
お店で話をさせていただく機会があった。


数々の秘話を興味深く聞くうちに
話がどう転んだか、
セロニアス・モンクの話題になった。


そうそう。
60年代になって
ビデオテープという革新的なメディアが放送界に登場し、
番組を収録して放映することが可能になったという話だった。


しかし、
今と違って大変に高価だったテープは
使い回しをするのが当然だったため
当時収録された貴重な映像は
大半が今となっては幻と消えた。


そういうエピソードは
ぼくもよく耳にする。


その方の話でおもしろかったのは
テープが高価だったので、
当時は収録したものを編集することもタブーだったそうなのだ。


編集作業のためにテープをたくさん使ったりしたら
それだけで予算がパーになる。
だから、基本は録ったものを
そのまま使うしかない。


歌番組なども
たいていそのように進行していたという。


ただし、歌番組は
台本があるから、まだよかった。


困ったのは
セロニアス・モンクだと
その方は突然言った。


1963年に来日したモンクの日本での演奏は
ライヴ盤も残されているが、
実はそのときテレビ局のスタジオで特別番組用の演奏もした。


そんな映像があったなんて
ファン垂涎ではないか!


しかし、
収録中、何を思ったか、
モンクは突然、演奏を止め、
何か考え事でもするように
スタジオの中をうろうろと歩き始めたのだ!


はらはらと見守るスタッフを尻目に
数分後、何かアイデアを思いついたようで
ふたたび彼は演奏に没入していった。


このときの演奏は
結局、上層部の判断によりお蔵入りとなったそうだ。


その方はもう45年も前の話を
なつかしそうに、
口惜しそうに語ってくれた。


ああ、
その中断もまた、
いや、
その中断にこそ
モンクの音楽があったんだと
今ならわかるのにね。


映像はもう存在しないけれど
事実と
そこに立ち会った方の思いを聞けてよかった。


素敵な話なので
お裾分けします。


明日には
おそらくこのブログのカウンターも
10万になりそうですね。(松永良平


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