Claude Gauthier クロード・ゴーチェ / Claude Gauthier

Hi-Fi-Record2009-01-17

 クロード・ゴーチェのアルバムを手に取る。
 過度な装飾の無いガット・ギターの弾き語り。枯れた感じの端正なボーカル。バッキングのサウンドにジャズのセンス。
 となると思わず身を乗り出してしまう。
 耳が反応する。

 

 ふとおやっと思ったのは、バフィ・セントメリーが書き、エルビス・プレスリーやボビー・ダーリン、バーバラ・ストレイザントなど60年代中期以降に数多くのシンガーに採り上げられた作品「Until It's Time For YOu To Go」が、収録されていたことだ。ゴーチェはフランス語訳を歌っている。
 もちろんバフィ自身も同曲を吹き込んでいて、それは彼女の出自であるフォークを忍ばせる仕上がり。後々に多くのポピュラー・シンガーによって取り上げられることで、この曲のそうした魅力が広まったとは言え、1965年の時点ではまだまだ知られざる作品だったはず。クロード・ゴーチェの取り上げ方も、フォーク、あるいはこの時期に萌芽を見せ始めたシンガー・ソングライターの態度に近い。



 クロード・ゴーチェがニューヨークのカーネギーホールでライヴを行った際にバフィとステージを共にし、後々、この曲を共に歌うことになったらしい。この曲を二人で書いたとする資料もあるのだが、クレジットを調べるとバフィ・セントメリーの作詞作曲とされており、ことの真偽はまだよくわからない。



 率直なラヴ・ソング。
 バフィ・セントメリーとクロード・ゴーチェ、ともにカナダ生まれの同郷だ。
 ふたりはどんな風に、思いを分け合ったのだろう。
 クロード・ゴーチェが本拠としていたモントリオールと、バフィ・セントメリーが暮らしていたニューヨーク。この二つの街は、思いのほか遠くない。(大江田信)



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