Gary McFarland And Peter Smith / Butterscotch Rum
今日の昼間、
このアルバムを店頭に出すために
検盤がてらお店で流していたら、
ラスト・ナンバーの「パトリシア」にさしかかったとき、
とある常連のお客さんに
「すごく今っぽい音ですよね」と言われた。
“今っぽい”というのは
現代的なテクノロジーという意味ではない。
なんとなく先行きが不安で
なんとなく元気がなくて
それでもなんとなく
落ち着いている。
そういうムードのことだ。
かつてのにぎやかで野心的な時代を望むのではなく、
今を肯定して生きるには
どういう覚悟が必要か
このアルバムのサウンドは切なく告げている。
それがアルバムのテーマというわけではなく、
時代を超えてそういう錯覚を起こさせるのだ。
ゲイリー・マクファーランドは
このアルバムを発表した71年、
お酒と常用していた薬の副作用で突然に亡くなってしまう。
死期を予感させるものなどなかったはずだが、
このアルバムには、
自分がそれまで追求してきたはずの
徹底的に心地よいサウンドに対して
どこか腑に落ちない風情がぼんやりと漂っている。
今年は
結構このアルバムを聴き返すかもしれない。(松永良平)