Kalapana カラパナ / Kalapana
ハワイの音楽には、どこかしらユートピア感がある。ハワイのオープンな風土やハワイの暮らす人々の日常のがそのまま映り込んだという言い方ももちろん間違いではないのだろうが、本土アメリカという鏡にハワイの音楽を映し出したとき、その鏡にユートピアの陽炎をまとわせるプリズムが隠されていたと考える方が正しいはずだ。
本土アメリカとの関係の中で、ハワイの音楽は自らの依って立つところを見いだしてきた。
50年代から60年代にかけてはジャズとポップをハワイ流に翻案してきた。
70年代に入ると、ハワイの若者の音楽は西海岸から発信されていたロックと呼応する。
ハワイのアイデンティティを、ハワイ育ちのロックにおいて始めて表現したアルバム。
西海岸のロックがはらんでいたユートピア感覚と、絶妙に響き合っている。というよりも、よりリアリティをもって封じ込められている気がする。ギャビィ・パヒヌイの音楽が熱い支持を集め始める時期と時を同じくして、カラパナの音楽がハワイに芽吹いたことが、いまもボクには興味深い。(大江田 信)